ボランティア座談会 Vol.5「ポストコロナとボランティア活動(後編)」

ボランティア座談会Vol.5
「ポストコロナとボランティア活動(後編)」

新型コロナウイルス感染拡大により、世の中は大きく変化しています。ボランティア活動も例外ではありません。
このような社会情勢の中で、ボランティアを取り巻く環境や活動の価値や意義は、そして社会は、どのように変化するのでしょうか
――学生コーディネーターがオンライン上で議論してみました。

聴き手:宮崎/語り手:石川、大貫、藤井 /書記:宮向 聴講:川名

※今回の座談会は、新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から、直接、顔を合わせて話すことができないため、オンライン(zoom)にて実施しました。


これからの社会、さらにボランティアの存在は、どのように変化していくと思いますか?また、あなたはその中でどんな存在でありたいですか?

宮崎:オンラインのことなど、色々な変化が見えていると思うのですが、これからさらにどのような変化があると思いますか?
石川:これも自分の中で答えがある訳ではないのですが、、、実際に対面で会うことはまだまだ難しい状況ですが、そもそもボランティア活動は対面での活動が前提になっているものだと考えていて、そのような前提がある活動だからこそ、今までは社会の中である一定の役割を担っていた部分があると思っています。だからこそ、コロナの影響でリアルでの活動の価値が下がっていき、社会の中でのボランティアの役割がなるとまでは言わないけれど、優先順位のようなものが下がってしまうような気がしますね。下がらないにしても、社会そのものの価値観やボランティアそのものの価値観ががらりと変わるような気がします。
宮崎:リアル(対面での活動)に価値がないみたいな風潮って感じました?
石川:今のところ感じてないです。まだまだリアルには価値があると思っています。ただ、テレビのニュースなどでテレワークの推進や、大学生の中でオンライン授業によって通学がなくなって嬉しいという声を聞くと、リアルの価値が下がっていくのかなと考えてしまいます。その風潮がボランティア活動にも移ってくる可能性はあるかもしれないと思いました。
宮崎:確かにそうですね。私も「ボランティア=リアル」だとは思ってないのですが、リアルじゃないボランティアって想像つきにくいですよね。そういうボランティアってどんなことを考えていますか?
石川:私も正直想像ついてないですね。ただ、ずっとこの状況が続いて、社会全体としてオンラインでやるのが当たり前という風潮に慣れてきたら、逆に何も違和感を覚えなくなっていくのかなと思います。自分の思いもよらないボランティアの形が生まれてくる可能性もあると思っています。ただ、そう考えると今のこの違和感というものは大切にしなきゃな、と思います。今は時代の変革の狭間にいるみたいな感じだと思うのですが、この状況に慣れてしまうと何も感じなくなっちゃうというか何も考えなくなっちゃうので、今感じている違和感、例えば「オンラインの価値は何か」や「リアルの価値は何か」ということが、まさに今考えなければならないことだと思っています。
宮崎:授業で以前、「世の中が変わりそうでも、変えようと思わないとそう簡単に変わらない」って話を聞きました。変わって良かったと感じるところや変わってほしい部分はありますか?
石川:先ほどサマボラ(学内で実施するボランティア団体フェア)の例で話したように、考えることは続けていきたいです。でも今までの方が良かったことも正直あると思っていて、例えば、ふと何気ない雑談をしているときにおもしろいアイデアが浮かんだり、わざわざ呼び出す程ではないちょっとした悩み相談を気軽にしたりするといったことは、リアルならではだと思います。ただ、だらだら雑談することが無駄だという見方もできるので、なんとも言えませんね。
宮崎:ありがとうございます。大貫さんはいかがですか?
大貫:一つはさっき(前編で)機械に弱い話をしたのですが、今の状況はある意味、そういう人がパソコンやスマホなどを導入しようかなと考える状況でもあると考えています。そうしたことを手助けするボランティアも広がっていくのかなと思います。
宮崎:そういったものを導入していった結果、ボランティアはどう変わると思いましたか?
大貫:オンラインでボランティアができるようになったらいいなとは思います。ただ、そもそもインターネットに不慣れな人へのサポートには、対面でないと難しい部分があると思います。また、以前、現在NPO法人も厳しい状況にあるという話を耳にしました。現在の状況で、そういった活動が衰退していってしまわないか、と言う部分は気になっています。
宮崎:私はそういうところってセーフティーネットでもあると思っているんですよね。それってオンラインに移行できるのでしょうかね?
大貫:例えば石川さんが携わっている緑地の活動のように、現場に行くことが必要な活動をリモートで行うのは難しいですよね。そのような活動については「すぐにリモート」で、とはならず、今後密を避けて実施するという形になってしまうのかなと思います。
宮崎:ありがとうございます。先ほど大貫さんがお話しされていた、「みんなリモートだから距離が近く感じる」ことって1つのキーワードだと思ったのですが、みなさんどうですか?
大貫:某大手進学塾の講義に似た形でリモートでの学習支援はできるようになると思います。また普段遠くにいる人とはリモートで関わることができるので、距離の問題を解決できることも重要ではないかと思います。
宮崎:距離の問題の解消はありますよね。心の距離と物理的な距離の不一致って悪い意味ではなくて、たくさん起こってきているように思います。藤井さんはどうですか?
藤井:だいたい出たかもしれませんが、石川さんが話した「価値観が変わっていく」という話は私も同じようなことを感じていて、リモートになることによって無駄がなくなった面もあると思います。ただ、その無駄だと思っていたところが本当に無駄だったのかということは、今は判断できることではないとも思います。でも、移動時間がなくなったことで逆にボランティアとかを始めてみようかなとか、新しいことに対する価値観をもしかしたら生み出しているかもしれないので、一概にこの状況は悪いものではないとは思います。観光を学ぶ立場としては、旅行ができないということのダメージはでかいですね。出来ていた事が出来なくなったけど、出来なかったことが出来るようになっている状況をチャンスと捉えられるかどうかだと思います。
宮崎:チャンスだなって思ったこととかありますか?
藤井:チャンスというか自分にとって得だったのは、通学時間ですね。学校まで通学の時間が片道で一時間半から2時間ぐらいかかる予定だったので、毎日の約4時間を通学以外のものに費やせるというのは結構大きなメリットかなって思いますね。
宮崎:そうですね。「無駄・無駄じゃない」って確かになんとなく感じている部分あると思います。具体的なエピソードってありますか?
藤井:一般論になってしまいますが通勤は無駄なのかどうかという点で考えてみると、通勤しているサラリーマンをターゲットにしていたお店とかにとっては全然お客が来ないという状況があると思うので、そこに対する何らかのフォローが今は必要だと思います。ただ、お店によっては生き残りをかけて新しいことに挑戦しているので、もしかしたら変革の時期であるというだけでお店の力量次第なのかなという…ちょっと身も蓋もないですけど 。
宮崎:新しいサービスが生まれたり、価値観の変化があったり、心の距離が近くなれるから変化していったりしていますよね。いい変化も悪い変化もあるのかもしれませんね。
石川:今話を聞いていて思ったのですが、ボランティア活動の中で大きな分野の一つに災害ボランティアがあると思っていて、災害は起こらないに越したことは無いですが、必ずしも悪いことだけではないのかもしれないと思っています。私は「釜石ラグビー2019応援プロジェクト」に参加していて、震災からだいぶ経った後に被災地である釜石に訪れたのですが、その時に出会った地元の方達に震災当時の大変だった経験をお聞きしました。もちろんその当時の体験が大変だったことには間違い無いと思いますが、そんな中でも、今は前をむいて生き生きと情熱を持って震災復興やラグビーに関する活動をされているなと感じました。今回のコロナも災害の一種だと考えると、コロナから何か生きがいのようなものを感じられるコトやモノが生まれる可能性は高いと思いました。
宮崎:挫折があったから強くなるってこともありますよね。
大貫:石川さんがお話ししてくださった方々って、そうした活動に参加したからこその繋がりを得られたのではないかと思うんです。もしコロナの状況下でも、そうした活動のように今までにはない繋がりが得られたとしたら、それがチャンスといえるのではないかと思ったのですが…質問になってしまいますが、何かそういった具体的なエピソードがある方いませんか?
石川:この座談会やオンラインボランティア相談室など、最近の学生コーディネーターの活動は新たな繋がりの一つではあるかもしれませんね。
宮崎:学内団体ミーティングも新しい繋がりなんじゃないですかね?
大貫:確かにそう思います。私たちの身近にもありましたね。
宮崎:こんな時だから繋がったきずなも、新たに得た価値観も大事にしていったらいいんじゃないかなぁ。価値観を大事にして、柔軟にいけたらいいですね。
藤井:石川さんの続きになるかもしれませんが、新しいことにいろいろ挑戦していく中で見捨てられる人がいないように、いろんな人にフォローができるような仕組みをつくっていくことがボランティアには大事かなと個人的には思っていますね 。
宮崎:確かにそうですね。大貫さんの機械の話にも通じそうですね。
大貫:それはあると思います。ただ具体的な方法はわからないですね…。
藤井:やっぱりそこがオンラインとリアルとの境界線になっていくのではないかなと思います。
石川:社会全体として、リアルとオンラインのそれぞれの良さを生かしたハイブリッドになっていくといいなと思いますね。
宮崎:そうですね、そんな感じですね。ではみなさん最後に一言お願いします。
石川:今日話してみて「変化」がポイントだと思いました。時代が変化している時って、何が起こるか分からないから不安になってしまいますが、だからこそいろいろ考えるようになるし、考えている中で面白いアイデアが浮かんでくるものです。今後もコロナに限らずいろんな変化が起きていくと思いますが、そういった状況を楽しみながらポジティブに捉えられたらいいなと思いました。
宮崎:ありがとうございます。楽しめたらいいですね。
大貫:参加する前、オンラインでボランティアする可能性って少ないと感じていたけど、話している中で可能性が見えてきたような気がします。
宮崎:私もそう思いました。ありがとうございます。
藤井:私も大貫さんと結構似ていて、今まではできないことに目を向けてしまっていたのですが、意外とできることもたくさんあるなということに気づかされました。これからはそこを探ることも楽しみの一つにしたいと思います。 
宮崎:藤井さんありがとうございます。確かにそうですね。
   討論会を聞いてくださっていた方にも一言いただきたいと思います。川名さん、いかがでしたか。
川名:これからは創造でなく、変革が大事な時代になると思います。大学生は、今年の夏休みに何を考え、どう過ごすかが今後の人生に大きな影響をもつと考えます。「ピンチ」のすぐ近くに「チャンス」があるはずです。
宮崎:ありがとうございます。いろいろな変化があって、それが良い部分と悪い部分といろいろ出てきていると思うのですが、その変化を大事にしていきたいですよね。新しい可能性の話もそうですけど、「何か新しくこういう活動できるのではないか」とか「こういう人は見放さないよね」っていうこととか見えてきた部分は色々あると思います。今回見えてきた部分や新たにできたつながりというのは、大事にしていきたいことだと思います。石川さんがおっしゃっていたように楽しんでいくというのもとても大事だなと思いました。今回は実りある議論をさせていただいてありがとうございました。ではこれで本日の座談会は終わりとさせていただきます。ありがとうございました。