ボランティア座談会 Vol.3
「ボランティアの捉え方」
「ボランティアの捉え方」
ボランティアと一口に言っても、そこにはさまざまな考え方やそれに基づく活動があります。今回はバックグラウンドがそれぞれ異なる3人の方にお話を伺い、ボランティアをどのように捉えているかを語ってもらいました。
登場人物(学生コーディネーター)
※聴き手:石川/語り手:伊藤、奥野、藤井/ 書記:大貫
※今回の座談会は、新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から、直接、顔を合わせて話すことができないため、オンライン(zoom)にて実施しました。
これまでどのようなボランティアに参加してきましたか?また、その活動では、どのようなことを感じましたか?
奥野:はい。僕は新宿で生活をしている路上生活者の方にスープを渡す「スープの会」というボランティア活動と、障がいのある方のスポーツをサポートするボランティアに参加しました。それらのボランティアには、大変な思いをしてる方のために何かしたいなと思って参加しました。そこで感じたのは、路上生活者支援のボランティア活動は幅広い年代が参加しているなと。自分より年下の人とかも。ボランティアって意外と気軽に参加してもいいものなんだなって思いました。
障がい者スポーツのボランティアでは、障がいのある方が楽しんで体を動かしている姿を見て、自分も体を動かすことが好きなので、いいなと思いました。あと、自分の方が元気をもらえるものでもあり、ボランティアっていいなって思いました。
障がい者スポーツのボランティアでは、障がいのある方が楽しんで体を動かしている姿を見て、自分も体を動かすことが好きなので、いいなと思いました。あと、自分の方が元気をもらえるものでもあり、ボランティアっていいなって思いました。
石川:幅広い年代の人が参加していると話していましたが、奥野くんはボランティア活動は誰がやるものだと思っていましたか?
奥野:社会人になった人だけでやってるものだと思っていて、その中で、たまに自分みたいな学生が参加しているイメージだったのですが、自分より年下の高校生や、さらに年が下の人たちがいるっていうのには、ちょっとびっくりしました。
石川:ありがとうございます。では、藤井さんおねがいします。
藤井: 私はボランティアとして、大学内にある緑地の保全活動をしています。この活動を通してすごく感じるのは、自分が好きな場所を守るために自分が何かできてるという事が、自分の中でいい経験になってるということですね。
私が生まれた埼玉県の所沢市に八国山という緑地があるのですが、小学生の頃にどんどん住宅地開発とかで変わっていく姿を見て、すごく寂しさを感じていました。そこから保全について興味をもって活動を色々調べているうちに、このボランティアに行きついて、そこから参加するようになりました 。
私が生まれた埼玉県の所沢市に八国山という緑地があるのですが、小学生の頃にどんどん住宅地開発とかで変わっていく姿を見て、すごく寂しさを感じていました。そこから保全について興味をもって活動を色々調べているうちに、このボランティアに行きついて、そこから参加するようになりました 。
石川:いい経験というのは具体的にどのようなことですか?
藤井: やっぱりいろんな人と関われるってことがすごく大きいなと思います。年代によって、活動している理由が全然が違ったりするので、目的がちょっと違う人たちがその同じ活動を通して交流しているっていう、そのことがすごく勉強になるなって思っていますね。
石川:ありがとうございます。伊藤さんお願いします
伊藤:私は藤井さんと同じで、緑地保全の活動を主に行っているのですが、そこで感じたことは、一人で向き合うのが難しい社会の課題とかに対しても、同じ目的というか、意思をもった人たちが集まって活動することによってその成果を出せるというか、自分たちで克服していけるのがすごく大事だと感じています。私が緑地保全を始めたのは、単純に誰かの役に立てればいいなっていう思いからだったのですが、実際に参加してみて、色々な人たちと関わりながら自分が社会の一員となって課題に取り組んでいけるっていうのは、すごく貴重な経験だなと感じてます。
それぞれが所属している学部の立場から見て、ボランティアはどのように映っていますか?学んでいることとボランティアはどのような関係性がありますか?
奥野:自分は物理学科に所属しているのですが、僕の中では、物理とボランティアの関係性はあまりないように思えて、物理の立場から見てっていうのはちょっと難しいですね。物理は物事の解明的なものだと思うのですが、ボランティアは人との関係性を大事にしていると感じていて。
石川:奥野くんとしては、物理とボランティアは独立したものと捉えているんですね。その二つのものに優先順位はありますか?
奥野:特に優先順位はないのですが、どちらにも興味があって、1つに絞る必要もないような気がするので、「どっちもやりたい」と思ってやってるという感じですね。
石川:ありがとうございます。藤井さんお願いします。
藤井:ボランティア活動に行く授業もあるので、だいぶかぶっていますね。 ボランティアをする人たちが、「観光」の分野だとかなり主戦力になる面が多いんですよね。まず、観光科学科が何をやっているのかが分かりにくいかもしれないのですが、基本的にハード面とソフト面があり、そのソフト面を担うのがボランティアの人たちだったりします。そこをどのようにして、観光に巻き込むかという考え方をする授業もあります。
石川:ハード面とは?
藤井:施設を作るとか。人を呼び込むために博物館を作るとかですね。
石川:なるほど。ソフト面について、もう少し詳しく教えてください。
藤井:説明が難しいのですが、「越後妻有トリエンナーレ」はご存じですか?新潟県で三年に1度行われる芸術祭があるのですが、そこには「こへび隊」というボランティアの人たちがいて、その人たちと一緒にアーティストさんが作品を作っていくという芸術祭です。それを例に出すと、外部の人を呼び込むための観光があり、地域の活性化につなげるまちづくりがあり、それらを支えるボランティアの人たちがいる、という三つの要素が重なり合って一つの芸術祭を作っています。それらの存在はきちんと確立されているのですが、だいぶ混ざり合っているというか。
石川:観光というと個人的なイメージでは、いかに全国各地から人を集めて地域にお金を落としてもらうかみたいな印象があったのですが、まちづくりという観点から地元の人やその地域が好きな人たちがボランティアとしてその地域を盛り上げつつ、魅力を発信するということも観光の側面としてあるという感じなんですね。
藤井:そうです。
石川:藤井さんは「地域ボランティアプログラム」の活動をしているという話をしていましたけど、地域ボランティアプログラムと観光はどのような繋がりがありますか?
藤井:観光科学科でも、里山を保全しながら適切に活用していく方法を学び、実践してます。プログラムでもほぼ同じような活動を行っているので、繋がりは深いと思います。
石川:地域ボランティアプログラムでは、地元の人は来るかもしれないけれど、全国からいろんな人が集まるということはないですよね。全国に広がっていなくても観光と言えるのですか?
藤井:そうですね。まず、地盤を固めるために地域の人にきちんと知ってもらうというか、いかにその地域の人に理解して関わってもらって、そこから外部に広めていくかっていう。
石川:なるほど、“地盤を固める”という部分も観光の領域に含まれているのですね。そう考えたら確かに納得ですね。では、伊藤さんお願いします。
伊藤:私は法学部なのですが、直接の関わりというよりも、考え方という部分ですごく似ている点があるなと思っています。どちらも社会の課題を相手にしているという点で共通点があって、法律はそういう課題に対して、「文字」でその対応を示す感じなのですが、ボランティアはそういうことに対して、「行動」で示しているというイメージがあります。例えば、ホームレスの方々に対し居住権を法律的に考える一方で、ボランティアは食事などの生活を助ける行動をしています。このように同じ社会課題に対して、互いに違う切り口から解決を図っていると感じています。
石川:手法は違うけれども、課題を解決するという部分では一致しているのですね。自分は法律のことはあまりわからないので、どうしても自分にできることは何かという文脈で考えがちですが、状況によっては法律など別の文脈で考えることも確かに大切ですね。
大学生は、ボランティアとどのように関わっていくべきでしょうか?
奥野:そうですね。ボランティアとどのように関わっていくかってすごく難しい気がしていて、ボランティアって一応自分の自発的な部分から始まるものじゃないですか。それにもかかわらず、それに対してどのように関わっていくってなんか難しいというか。まだボランティアに関しても、そこまで活動をしていないっていうこともあるのですが、自分の中では授業で教養科目をとることと同じように、そのボランティアを何かを学ぶ手段の一つとして捉えてもいいじゃないかって思います。
石川:奥野くんは、ボランティアは自発性という部分が一番大切だと考えているのですね。
奥野:やりたいと思うんだったらやってほしいなと思います。
石川:その考え方は大切ですね。自分の周りで就職活動のためにボランティア活動をしなければならないと思っている大学生をたまに見かけます。もちろんボランティア活動の経験が就職活動に役立つことは多々あると思いますが、ボランティア活動はしなければならないもの、するべきもの、という訳ではないですよね。そのように考えている人は特に「やりたい」という自分の心の声を大切にして欲しいなと思いますね。
では、藤井さんお願いします。
藤井:そうですね。私としてもやっぱり自分の好きなことがボランティア活動になるのであれば、気負わずに一歩踏み出して行ってみるっていう...そこはやっぱり、大学生は特に大事なんじゃないかなって思っています。
石川:大学生が特に大事なのはどうしてですか?
藤井:大学生は自立することを求められてる期間だと思ってます。これから社会に出るために、自分が何をしなきゃいけないのか、何ができるのか、そういうことを見つけるための時間だと思っているので、ボランティアは自発性を学ぶというか、一歩踏み出すっていうことを経験する一つの手段かなっていう…難しいですね。
石川:確かに自発性は大事だと思いますし、ボランティアをやることで自発性を考える機会は多くなりますが、そもそも自発性って言葉としても概念としても難しいですよね。ちなみに、自発性がない人はそれを学ぶにはどうすればいいんですかね?
藤井:やっぱり自分の好きなことだったらハードルが低いんじゃないかなと思います。自分の興味あるボランティア活動があれば、ボランティアということを考えずに踏み出してみるのも大切なのかなと思います。
石川:藤井さんは始める前にあまり考えず、とりあえずやってみようっていう気持ちから入ったのですか?
藤井:そうですね。
石川:やってみる前とやった後で何か変わりましたか。やった後でどういう気持ちの変化がありましたか?
藤井: 目的を通した人のつながりを知ることができたことがすごく自分の中の見方を変えたなと思っていて、バイトとかお金の繋がりだとちょっと距離が空くような気がしています。言葉にするのは難しいですけれど、同じ目的を目指して、大学生から60代以上の人たちと関わったり、小学生と関わったり、ビジネスとはまた違う繋がり方がおもしろいなと感じました。
石川:そういうビジネスライクじゃない繋がりがボランティアを通じてできたっていうことが、藤井さん自身にとって大きな経験となったのですね。
では、伊藤さんお願いします。
では、伊藤さんお願いします。
伊藤:私はボランティアを始めるきっかけって何でもありだなと思ってて。社会を良くしたいとか誰かの役に立ちたいとかそういう意思をもってボランティアを始めてみるのもいいし、たまたま自分のやっていた活動がボランティアにつながっていく人もいると思うので、始まり方はすごく色々種類があっていいと思っています。きっかけは人それぞれ何でもいいと思うのですが、自分の活動がボランティアに行き着いた時に、ボランティアの考え方っていうか、自発性とか社会性とか色々あると思うんですけど、そういうボランティアの要素についてもちょっと考えてほしいと思います。特に自分がしていた活動がたまたまボランティアだったっていう人は、ボランティアについて考える機会がなかなかないと思うので、自分たちの活動が、自分から見て、周りから見てどうなのかとか、視野を広げるためにもボランティアについてもっと多くの大学生に考えてもらえたら嬉しいなと思っています。
石川:ボランティア活動の考え方は大切だから、ぜひ多くの大学生にもボランティアを必ずやれとは言わないけれど、知ってて損はないからぜひ学んで欲しいということですか?
伊藤:そういう感じです。ボランティアについて考えたことがあるのとないのとだとおそらく自分の活動に対する見方も変わってくると思うので、なかなかそういうことを考える環境にない人もいると思うんですけれど、そういう人たちも何かのきっかけでボランティアについて考える機会があればいいなと思っています。
石川:伊藤さんはその考え方を知ってることで、よかったなって思ったことはありましたか?
伊藤:藤井さんもさっき話していたと思うのですが、大学生って自立する期間だと思っているんです。私自身あまり自分のやりたい事とかがはっきりしない部分があったのですが、ボランティアとして色々活動したり、知識を深めていく中で、自分のやりたいことを大事にしながら行動していく大切さというか、これからの自分の考え方にも影響を与えているなと思っています。
石川:考える力がついたことによって、何かを選択する時に色々考えるようになったという事でしょうか。
伊藤:今までは自分のこうしたいというような好奇心をあまり重視してこなかったというか、損得勘定が一番自分の行動に影響を与えてるなと思っていたのですが、それだけじゃないなって、自分のやってみようという気持ちを大事にして行動した方がいいんだなと感じました。
石川:そうなんですね。ONE PIECEという漫画の主人公ルフィも損得ではなく自分や仲間の気持ちをとても大切にしていて、かっこいいなと思うのですが、伊藤さんもボランティア活動を通じてルフィに一歩近づくことができたのですね。とても素敵だと思います!
私からの質問は以上となりますが、何か聞いてみたいことや感想などはありますか?
奥野:自分は物理とボランティアには関係性があまりないと考えているのですが、藤井さんが自分の学部や学問と似ている活動をしているということを聞いて、そこは自分と大きく異なる点なのかなと感じています。藤井さんは自身の学問や将来の仕事のためにボランティアをするのに対して、自分はそのような関係はなく純粋にボランティアを行っているという違いがあると感じたのですが、その点に関して藤井さんはどのように考えていますか?
藤井:確かに今私が行っているボランティア活動は、今後自分の仕事の役に立って、お金を稼ぐことに繋がると思っています。しかし、半分ほどは自分の趣味的に、純粋に楽しんでボランティア活動を行っています。私の中では、私と奥野くんで特に大きな違いがあるとは思っていません。学問とボランティアが関係しているのであれば、私たち学生コーディネーターのメンバー比にも学部ごとの偏りが出そうですが、実際は学部も学科もバラバラですよね。それを見てもあまり傾向というか、特に関係しないのかなと思います。結局は自分が誰とか何の学部に所属しているとかではなくて、私たちのバックボーンというか、そこと関わりがあるのかなと思います。
石川:ありがとうございます。他に何か質問はありますか?
藤井:それぞれで自分を突き動かしてるものって何だと思いますか?ずっとボランティアを続けているモチベーションというか。石川さんも含めて回答をお願いします。
石川:現時点では惰性ですね。始めた当初は僕も別に自分の中の「これが自分をつき動かしていた」みたいなものはなくて、他の人に誘われてやってみたことをずっと続けていくうちに、段々誘ってくれる人が周りにいなくなったけれど、流れで続けている感じです。あとは、大学四年間っていう区切りがあるからそこまで続けようかなと思っている感じですかね。
奥野:ボランティアを考えるのと同じで、学生というのは区切りは必ずしもあるものではないと思うので、自分をつき動かしてるっていうかモチベーションは人それぞれ。ボランティア活動を、NPO団体のような仕事にしていく人もいるし、趣味として活動をずっと続けていく人たちもいて、結局、モチベーションは人それぞれだなって思いますね。自分はボランティアを知って社会について知りたいというのが続けている理由かなと思います。
石川 : なんで社会について知りたいって思ったのですか?
奥野 : 自分自身としてはなんで社会について知りたいかってことに特に意味がなくて、年が経つにつれて自分が大人になる上で社会を知りたいなって思うようになりました。
伊藤:私はなんかもうボランティアが自分の中の一つの居場所みたいなイメージがあるので続けています。
藤井:居心地のよさって大事ですよね。
伊藤:自分を社会の中に置くことによって、生きているなというか、自分が存在しているという感覚を感じます。自分の存在価値みたいなものに繋がると思うのですが、今はいっぱい人がいて別に自分がいなくても社会が回っている気がするかもしれないけれど、ボランティア活動をしてると、自分の存在が何かしらの役に立てているなっていうことが実感できるから、達成感じゃないけれど、そういうことを感じる時がありますね。
石川:そろそろ終わりにしたいと思います。ボランティア経験や学んでいる学問が違うからこそ異なる意見が出ることもあれば、3人とも共通している意見もあって、どれも興味深い内容でした。特に、3人ともやりたいという気持ちや自発性が大切だということを共通しておっしゃっていたことが印象的でした。ただ、気持ちというのは不確定な部分も多く、捉えることが難しいものでもあるのかなと思いますので、しっかりと自分自身を見つめ、考え続けていかなければならないなと思いました。御三方ありがとうございました。
学生コーディネーターとは
同じ学生の立場から、学生と地域をつなぐ活動を行っています。ボランティア活動を紹介したり、魅力を伝えたり、ボランティア活動に参加するためのきっかけづくりなど、ボランティアコーディネーター(職員)とともに都立大のボランティア活動の機運を高めるサポートをしています。
※学生コーディネーターに関する詳細はコチラをご覧ください。